デルフィニウムの研究

青い切り花として重宝されているデルフィニウムは複雑なアントシアニン構造をもつことが知られています。このアントシアニンがどのようにして合成されているのか、主に修飾酵素遺伝子の同定およびその情報を利用した研究をおこなっています。

新規赤系統花色品種の開発

デルフィニウムは青系統花色品種に比較して、赤系統花色品種は数が少ない状況にあります。様々なカラーバリエーションを得るためにこれまでにない色合いの赤い花色をもつ品種の作出を目指しています。

Sakaguchi, K., Isobe, C., Fujita, K., Ozeki, Y., Miyahara, T. (2019). Production of novel red-purple delphinium flowers containing cyanidin-based anthocyanin using hybridization breeding. Horticulture Journal 88: 514–520. https://doi.org/10.2503/hortj.UTD-100
交雑からシアニジンタイプを主要アントシアニンとするデルフィニウムを作りました。

Miyahara, T., Hamada, A., Okamoto, M., Hirose, Y., Sakaguchi, K., Hatano, S., Ozeki, Y. (2016). Identification of flavonoid 3′-hydroxylase in the yellow flower of Delphinium zalil. Journal of Plant Physiology 202: 92-96. https://doi.org/10.1016/j.jplph.2016.07.013
野生種の花でシアニジンを作るための鍵酵素であるF3’H遺伝子が発現していることを発見しました。

Miyagawa, N., Miyahara, T., Okamoto, M., Hirose, Y., Sakaguchi, K., Hatano, S., Ozeki, Y. (2015). Dihydroflavonol 4-reductase activity is associated with the intensity of flower colors in delphinium. Plant Biotechnology 32: 249-255. https://doi.org/10.5511/plantbiotechnology.15.0702b
アントシアニン合成に必須であるDFR酵素の基質特異性について青花品種と赤花品種で比較しました。

Miyagawa, N., Nishizaki, Y., Miyahara, T., Okamoto, M., Hirose, Y., Ozeki, Y., Sasaki, N. (2014). Sequence variations in the flavonoid 3′,5′-hydroxylase gene associated with reddish flower phenotypes in three delphinium varieties. Plant Biotechnology 31: 83-87. https://doi.org/10.5511/plantbiotechnology.13.1203c
赤花品種では青い色素を作る鍵酵素であるF3’5’H遺伝子が欠損していることを示しました。

アントシアニン修飾酵素の研究

シアノデルフィンと呼ばれるアントシアニンの7位が複雑に修飾された構造をもつアントシアニンがどのような酵素により合成されているのか研究しています。

Ishii, I., Sakaguchi, K., Fujita, K., Ozeki Y., Miyahara, T. (2017). A double knockout mutant of acyl-glucose-dependent anthocyanin glucosyltransferase genes in Delphinium grandiflorum. Journal of Plant Physiology 216: 74-78. https://doi.org/10.1016/j.jplph.2017.05.009
アントシニンの7位に修飾されたヒドロキシベンゾイルグルコースの末端にグルコースを配糖化する酵素遺伝子(BGGT1と2)の二重欠損個体を発見し、BGGT1と2 がこの配糖化反応の責任遺伝子であることを示しました。

Nishizaki, Y., Sasaki, N., Yasunaga, M., Miyahara, T., Okamoto, E., Okamoto, M., Hirose, Y., Ozeki, Y. (2014). Identification of the glucosyltransferase gene that supplies the p-hydroxybenzoyl-glucose for 7-polyacylation of anthocyanin in delphinium. Journal of Experimental Botany 65: 2495-2506. https://doi.org/10.1093/jxb/eru134
アントシアニン7位の修飾に必要とされるドナー基質の合成に関与する配糖化酵素遺伝子を同定しました。